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映画“dieAter”公開直前インタビュー!!


摂食障害。皆様も一度くらいは耳にしたことがあるのではないだろうか?

拒食症、過食症、そういった単語も目にすることはあったのでは。

しかし、その実態は?

と言われるといまいちよく分かっていない。

そんな摂食障害の、なんと映画を作った男がいる。それも一人で。

映画監督《藤本 純矢》

今回忙しい時間を縫ってインタビューに答えていただいた。

――――――――――――――

―今回《摂食障害》についての映画を撮影されたとのことですが、どういった経緯なのでしょう?

藤本:まあ話せば長いのですが、もともと映画が作りたいという気持ちがありまして。そこで色々考えてこうなったというか。

―えっと確か、もとはコーヒー屋さんですよね?(笑) ※監督はフジムケコーヒーというコーヒー屋も営んでいる。

藤本:まあそうなんですが(笑)というのも、僕はあくまでも個人事業主なので、肩書に関しては割と自由です。何をやってるかでその時の肩書が決定しているので。今は、映画監督(笑)

―なるほど(なるほどなのか?)

藤本:まあ、話しますと元々、僕は映画業界にいまして。5年ほど。

―元々映画制作をなさっていたと?

藤本:あ、いえ。撮る方ではなく、興行に5年ほどいましたね。アルバイトも含めると7年くらいいたので、一番長いキャリアかな。

―興行というのは?

藤本:あ、映画はですね。撮る人(制作)、届ける人(配給)、かける人(興行)、見る人(お客様)、の4つの流れを汲んでいます。

いくら撮っても見てもらう人がいないと映画になりませんから。この流れの中で宣伝や営業といった作業もありますし、今では制作側も色んな組織で分担したりというケースが多いですね。

―かける人ということは、劇場にいたということですね。それがなぜ撮影を?

藤本:作りたい思いは昔からありましたけどね。ものづくりが好きなので。とにかく好きなことがやりたかった。

その中で、特に好きだったのが映画だったかな。漫画も好きでしたが、当時一番お金を使っていたのは映画だったので映画の仕事をしたいなと。これは映画プロデューサーの川村元気さんの影響です(笑)一番お金をつかっていることが、一番好きなことだよ、と。

まあでも要は才能もないし、キャリア形成の余裕もないので(学校に通ったり)、諦めたんですよ、撮るのは。

最初は映画業界にいれれば良いと思って、映画館で働いてたんです。

気が付いたら、日本でもトップクラスの映画館にいて、まあそこで色々学んでいるうちに、なにかおかしいなあ、と。

―おかしいとは?

藤本:良い映画が必ず人の目に触れるわけではないというか。まあそれはアート全般に言えることで。音楽も、絵も、本も、そうなんですけどね。総合芸術でアウトプットの場所も限られている映画は特に顕著というか。

単にかかっていてお客さんが来ない、とかでもなく、かかりさえしない。良い映画はたくさんあるし、才能のある若いやつも多いのに、チャンスも少ないし、とにかくモチベーションが保ちにくい。これでは映画文化は暗いんじゃないか?

それが構造上の問題だったりする(あまり深くは言えないけど)。

―それで映画を撮ろう!ってなったと(なるのか…笑)

藤本:そうですね。今回僕はちょっと普通ではない方法で映画を作りました。もっというと、これは映像表現であって、映画ではない感じ。

興行にいた立場から見ると。これから映画にしていかないとなっていう。

―映画ではない?(ややこしいよ!)

藤本:はい。映画は、総合芸術でもあり、文化的な側面も大きいのですが、一方で産業でもあるんです。だからこそ継続性があって、ずっと根付いている。

芸術は本来もっと手近で自由である、という考え方も好きなのですが、興行にいたら、そういう感覚はグッと薄まる。産業にして、経済に組み込んでいかないと、次がないんです。

―(なんとなくわかった。要はおうちで作る美味い飯で終わるのではなく、みんなで食える美味い飯屋に変えろということかな…)その中で具体的にどういった取り組みを?

藤本:個人での製作ですね。制じゃなくて製の方。一人でも出来るよ、このくらいは!というのを示したかった。そうなると、やるのが一番早い。

映画は現状リスクが勝ってしまうことが多くて、それ故に企画段階でボツになる、撮ったのにかからない、かかっても回収不可能で持続できない。そういうことがバンバン起きるし、組織でやっても起こる。若手なら人生をかけないと出来ないケースもある。

僕の知ってる若手監督は、映画を撮る資金のために治験にひたすら通い、深夜もひたすら働いてた。その中で良作を撮ってましたが、やっぱり中々かからない。かかっても、見てもらえない。おまけにこんな生活では作品の質も保てない。

これが構造上の問題からくるのであれば、映画産業は映画文化を育てないということになる。

―(凄い深い話だった…)

藤本:で、具体的にやったのはクラウドファンディングによる資金調達と、低予算で全部自分でやる。ということ。

―クラウドファンディングでは60万を調達したそうですね。

藤本:そうです。低予算であれば、この額でも十分作れる。ただ、制作できるものは限られてくるので、そのあたりも踏まえてドキュメンタリー映画にしました。

ドキュメンタリー映画であれば、素材のクオリティはそこまで問われませんし、テーマによっては仲間もいるというか、場も既にあります。

社会的に意味のある作品にしたい、テレビには出来ないことをやりたい、とか。やりたいことの方向性が合致したというか。

―全部ご自身でやられているとのことですが。

藤本:はい(笑)

撮影、取材、録音、録画、編集、脚本、キャスティング、監督?

宣伝、配給、興行、営業、えっと…(笑)

これはちょっと無理感ありました!もう少しチームを組めば、もっと円滑でしょう。でも一人でもこのくらいは出来るよ、という意味ではよかったなと。

若手作家でも、元気があるやつには是非取り組んでほしい。僕と違って、きちんと学んできた作家さんはたくさん埋もれていると思うから。

―今回《摂食障害》をテーマに選んだのは、なにか特別な思い入れが?ご自身が当事者であるとか、あるいは身内にいるとか。

藤本:僕自身は特にそういったことは無かったですね。身内にも、いません。友達には結構いて。そこで元からわりと色んな話を聞いてました。

その時に、おい、ずいぶん自分の思っていたイメージと違うな。なんだこれ?っていう違和感があって。僕も話を聞くまではネットのニュースとか、テレビとかでしか見たことなくて、こんな感じなのかなあ?と漠然としてまして。

でもずいぶんギャップがあった。

―それを埋めたくなったということでしょうか?

藤本:うん。どうかな。埋めたくなったっていうほどではないかも。

でも、そうじゃなくね?という声は出したかった気がする。で、当事者の中でもそういう活動をされてる方はいらっしゃいます。

が、どうにもね。当事者の話を聞く人って、ある程度興味がある人というか。もっと、当時の僕がそうだったように、漠然と持たれてるイメージを払拭するなら、なんていうんでしょう、カジュアルな?あるいはポピュラーな方法で、かつインパクトは必要です。

じゃあ何が自分に出来るんだろうってなったときに、お話した通り映画だな、これと。それもまったく新しいやり方で。

―それで今回の取り組みに至ったわけですね

藤本:そうなんです。僕としては罹患しなかった側です(表現の適切さはさておき)。

正直、話を聞けば聞くほど、僕にも十分可能性があったなあと思うことがある。単に男性だからかかりにくかったのかもしれないけれど(※男性もかかるが、割合としては比較的少ない)。ちょっと納得できなかったというか(笑)

で、なぜこの人たちはこの病にかかったんだろう?という風に考えても答えは無限にあって難しい。状況が色々ありすぎるし、原因だってあんまり分かっていない。

でも、なぜ自分はかからなかったんだろう?と考えるのは、とりあえず対象が一人なので理解はしやすかった。それを考えているうちに、かからなかった僕にできることは何?

というところまで来て、映画だ!!みたいな(笑)

まあ何かと収束しやすかったというのはありますね。正直。

他のやり方も全然あるとは思うんですけどね。

質問に答える監督の真剣な様子。

―ありがとうございます(思ったより色々考えてるんだなこいつ)。今回の作品はどんな方に見てもらいたいですか?

藤本:えっと、人類(笑)

まあ冗談ですが、もちろん《摂食障害》と聞いて心がざわっとした人(当事者も含め)には見てもらいたいのはありますが、単に《知らないことを知りたいなあ》という知識欲で見てもらうのがいいかな。

映画としてはあまり重くないというか、まあかっこよく作りましたんで(笑)

普通に映画として評価されたいんです。それは、映画業界の中で僕のやりたいことの方に合致しますから。なのでコンクールにも応募します。

本当は映画館でかけたいですが、映倫などは通していないんです。ここのステップを踏むと、お金も時間も制限も、もっと必要になる。

少し大通りをそれたやり方ではありますが、カウンターカルチャーというか。インディーズバンドがCDを売る感じで(笑)

―冒頭10分拝見しました。確かに思ってたようなイメージとは違いましたね。なんというかパンクな感じで…(笑)

藤本:ですよね~。

そこも意味合いはあるというか。反骨精神みたいな気持ちはあります。それは《摂食障害》を、もし文化としてとらえたら?という見方をした時に少し近いにおいを感じたというか。

まあこの辺りは本編を見てもらった方が…(笑)

後は元々、園監督とか庵野さんが好きだっていう作家性によるものだとか、パンクやハードコア音楽には、不安を和らげるような効果が実はあるらしく、そういう点でも疾走感は大事にしました。

なんせ、ドキュメンタリー映画って大抵は淡々としていて、眠くなっちゃうんですよ(笑)それだと多くの人に見てもらえないじゃないですか。

普通に面白い!これはまあ大事でしょ。

―なるほど。どちらでこの作品を見ることが出来ますか?

藤本:今は上映会がメインですね。

限定されているのですが、ここも手は考えていて。ネット配信で見れるようにします。

―ネット配信というとオンデマンドみたいな?

藤本:仕組みもこちらでやるというか。

ネットフリックスとかhuluとかAmazonみたいなサービスで配信するのもハードルが高いし、それにこれ僕の感覚かもなんですが、映画館に足を運ぶ人は、レンタルとかで家で映画を見ることはあっても、こういうサービスとなると、登録がめんどくさくてあんまり使っていない気はする。

一応、劇場にいたときにそういう声は多かったですけどね。

それにスマートフォンで見れるようにはしたいですね。若い世代にも見やすいように。

―いつから見れるのでしょう?

藤本:現在、こちらも一人で進めてまして、29日から配信開始します。中々大変です(笑)

それまでには作品のあらすじなどが分かるページも立ち上げます。

今はFacebookが一番情報が多いのと、ホームページで冒頭10分が見れますね。

―ありがとうございました。最後に一言、お願いします。

藤本:自分で言うのもなんですが、色んな面をとらえても、これからのやり方というか。そういう要素を包括していると思っていて。

僕自身もチャレンジなので、正直不安もありますが、とにかくここは出演者の皆の力で良いものにはなったと思います。

是非、一度作品に触れてほしいなと思います。

堅苦しい話はしましたが、誰かの心に刺さったときに映画は始まって、それを抜くか、傷として残すかは、各々が考えればいいので。

そういう作品ですね…(笑)

映画DieAter Documentary OF ED“摂食障害”

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監督 藤本 純矢

◆撮影協力

取材・文=ふじもとあつし、撮影=ででみ、制作・キャスティング=ふじもとあつし

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